(所属会)愛知県司法書士会 会員番号2133・簡裁訴訟代理等関係業務 認定番号第1801503号・一般社団法人日本財産管理協会
(経歴)20代から司法書士試験の勉強をしながら司法書士事務所で補助者業務に従事する。平成29年度に司法書士試験合格。愛知県岡崎市の司法書士法人で司法書士として4年間実務経験を積む。令和4年、すでに開業していた父の社会保険労務士事務所と合同という形で、太田合同事務所を開業。
(趣味)競馬観戦(ギャンブルはしません。昔社台ファームで働いていました)、サッカー観戦(セリエA、プレミア、Jリーグが好きです)、子供と遊ぶこと(娘が2人います)
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法律上の罰則規定は?
令和6年4月1日から相続登記義務化が始まります。
「義務化」ですので、義務を果たさなかった場合には、罰則があります。
法律では以下のように定められています。
申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する(改正不登法第164条)
つまり、罰則というのは具体的には、10万円以下の過料(罰金)ということになります。
罰則に当たるのは、期限を経過した場合の話ですので、期限内に手続きを行えば、何ら問題はありませんが、万が一正当理由がないにもかかわらず、期限内に手続きを行うことができなかった場合には、罰金の可能性が出てきます。
ただ、法務省の通達(法務省民二第927号令和5年9月12日)によると、期限内での手続きをしなかったからといって直ぐに、罰金を支払う必要があるわけではなさそうです。
相続登記期限経過後どうなるのか?
上記の通達では、下記のように記載されています。(一部読みやすいように省略しています)
登記官は、申請をすべき義務に違反して改正不登法第164条の規定により過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、これらの申請義務に違反した者に対し相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告し、それにもかかわらず、その期間内にその申請がされないときに限り、遅滞なく、管轄地方裁判所にその事件を通知しなければならないこととされた。
解説しますと、相続登記の期間が経過し、まず登記官(登記の審査をする人)がそれを発見します。
すると、登記官は、登記義務のある人へ「相続登記がされてませんけど、なんでですか?手続き出来ない理由があるのなら記載して返答してください。」という内容の催告書を書留郵便等で送ります。
その催告書にも応答をしないと、いよいよ登記官がそれを裁判所に通知して、裁判所から罰金を支払ってくださいという書面が届くことになります。
登記できない正当理由とはなんなのか?
期限経過後、罰金の通知が来るまでの流れは、ある程度わかったかと思います。
法律では「正当理由がないのに義務を怠った時は」という条件を付けています。
では「正当理由」とは具体的に、何を指すのでしょうか?
先ほどの、法務省の通達では、そこにも言及しています。
① 相続登記等の申請義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
② 相続登記等の申請義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
③ 相続登記等の申請義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
④ 相続登記等の申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
⑤ 相続登記等の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合
どれも妥当な理由と言えると思います。
もちろんこれらの正当理由がないのであれば、相続登記は義務ですので、手続きを遅滞なく行うべきでしょう。
司法書士太田合同事務所からのアドバイス
相続登記の義務化、罰金などと聞くとなんだか物々しい感じがしますが、実際にはすぐに罰金対象になるような未登記の不動産は出てきません。
(注)新法の決まりだとの最速で2027年の4月以降に懈怠になっている不動産が出てくるものと思われます。
今までも相続登記義務化に限らず、例えば、建物の表題部登記は、登記することが義務になっていますが(不動産登記法47条)現実には、未登記の建物が多く存在しています。
にもかかわらず、建物が未登記であることで、罰金になったという話はほとんど聞いたことはありません。
未登記建物で罰金の話をあまり聞いたことがないのは、理由は定かではありませんが建物は古くなればいずれ取り壊されますし、時が来れば自然と消滅するので放置してもそこまで大きな問題になることはないからではないでしょうか。
翻って相続登記については、土地も対象になります。
土地がなくなることはありませんので、未登記を放置することの弊害は大きいと言えます。
そう考えると、未登記建物のように罰金が科されることはほとんどない、という状態にはなりにくいような気がします。
過去のことで考えてみる、法務省側もこう言った新しい制度で、制度がスタートした途端に、積極的に罰金を科していくということは考えにくいですが、少なくても全く何もせず、法律が有名無実化するということも考えにくいため、注意が必要です。
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