司法書士 太田 徹
この記事を書いた人

(所属会)愛知県司法書士会 会員番号2133・簡裁訴訟代理等関係業務 認定番号第1801503号・一般社団法人日本財産管理協会
(経歴)20代から司法書士試験の勉強をしながら司法書士事務所で補助者業務に従事する。平成29年度に司法書士試験合格。愛知県岡崎市の司法書士法人で司法書士として4年間実務経験を積む。令和4年、すでに開業していた父の社会保険労務士事務所と合同という形で、太田合同事務所を開業。

趣味)競馬観戦(ギャンブルはしません。昔社台ファームで働いていました)、サッカー観戦(セリエA、プレミア、Jリーグが好きです)、子供と遊ぶこと(娘が2人います)

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    遺産分割協議とは?

    遺産分割協議の基本的な解説を別の記事でしていますので、そちらをご覧ください。

    相続人で海外在住者がいる場合

    遺産分割協議の基本的なことは、お分かりいただけたと思います。
    では、相続人のなかに、海外在住者がいる場合には、そもそも遺産分割協議が出来るのでしょうか?

    結論から申し上げますと遺産分割協議は可能です。
    海外に住んでいる相続人がいたとしても、遺産分割協議をして遺産分割協議書作成することはできます。

    ただし、通常の日本国内に全ての相続人がいるケースに比べて、必要な書類や必要な手続きが多いです。

    遺産分割協議書は、相続人が署名をして、実印を押してそこに印鑑証明書をつけることで、その書類の真実性を担保しています。
    日本国内の法律では、本人の署名があり、押印がなされているということは、本人の意思に基づきその書類は作成されたという推定規定があります。(民訴法第228条第4項)(最判昭39・5・12民集18巻4号597頁)
    (注)上記の規定に関して印鑑の制限は特にありませんが(最判昭和50・6・12裁判集民115号95頁)実印の方がより証明をすることが容易であるため実印が推奨されます


    しかしながら、海外では日本のように、印鑑の文化はありません(韓国や台湾のように印鑑文化がある国もあります)
    ですので、印鑑証明書を発行することもできないことになります。
    相続人で海外に住んでいる人が遺産分割協議書に、署名をした際にどのようにしてその人が署名したということを証明していくのか?ここが問題になります。

    印鑑証明書の代わりになる書類

    上記で説明した通り、海外在住の人は一部例外を除き印鑑証明書がありませんので、代わりのものが必要になります。
    それが
    『署名証明書』です。

    署名証明書とは、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。
    日本国籍を有する方のみが申請ができます。
    証明の方法は、在外公館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した私文書を綴り合わせて割り印を行うもの、若しくは申請者の署名を単独で証明するものになります。

    領事の面前で署名(又は拇印)を行わなければならないので、申請する方本人が公館へ出向いて申請することが必要です。
    また代理申請や郵便申請はできません。

    必要書類

    ・日本国籍を有していること及び本人確認ができる書類(有効なパスポート等)

    ・綴り合わせによる証明を希望される場合には、署名(又は拇印)すべき書類

    手数料

    1通につき邦貨1,700円相当がかかります。
    支払は現金(現地通貨)です。

    署名証明書は、日本においては不動産登記、銀行ローン、自動車の名義変更等の手続、などの理由で印鑑証明の提出が求められますが、日本での住民登録を抹消して外国にお住まいの方は、住民登録抹消と同時に印鑑登録も抹消されてしまいます。
    そのため法務局や銀行等では、海外に在留している日本人には印鑑証明に代わるものとして、署名証明の提出を求めています。

    (引用元 外務省HP)

    住民票の代わりになる書類

    新しく不動産名義人になる人は通常、住民票が必要になります。(不動産登記手続きでは、登記簿に名義人の住所氏名を登記するため必要になります)
    それでは、海外在住者が名義人になる場合には、住民票が無いわけですがどうすればいいのでしょうか?

    つまり日本でいうところの住民票の代わりになる書類が必要になります。
    住民票の代わりになるのが、在留証明になります。

    在留証明は、外国にお住まいの日本人がどこに住所を有しているか、又は、どこに住所を有していたかをその地を管轄する在外公館が証明するものです。
    一般的には現在外国にお住まいの方(日本に住民登録のない方)が不動産登記、年金手続等で、日本国内の提出先機関から外国における住所証明の提出が求められている場合に発給される一種の行政証明です。

    必要書類

    ・日本国籍を有していること及び本人確認ができる書類(有効なパスポート等)

    ・住所を確認できる文書(例:現地の官公署が発行する滞在許可証、運転免許証等)

    ・滞在開始時期(期間)を確認できるもの

    ・証明書上の「本籍地」欄に都道府県名のみではなく、番地までの記載を希望する場合は戸籍謄(抄)本

    費用

    1通につき邦貨1200円相当です。
    お支払は現金(現地通貨)となります。

    在留証明は在外公館のみで発行している証明書です。
    遠隔地にお住まいの方や病気等個々人の事情により、在外公館に出向いて申請することができない場合には、郵便による申請も可能です。
    ただし、出来上がった証明書は手数料の納付後に窓口にて受取になりますので、申請人本人又は代理人(委任状が必要)が一度は在外公館へ出向く必要があります。

    司法書士太田合同事務所からのアドバイス

    海外在住者が遺産分割協議の当事者にいる場合には、通常の遺産分割協議に比べて煩雑になりやすいのは事実です。
    住んでいる国によっては、署名証明書や在留証明を取得するだけでも一苦労という可能性もあるでしょう。

    必要書類を揃えたとしても、法務局での登記手続きはイレギュラーな登記申請になりますので、事前に法務局との打ち合わせも必要になるでしょう。
    今回のようなケースでご自分で相続登記を行うことは、特殊な書類を手配して、法務局での打ち合わせも自分でしなければいけません。
    労力と手間を考えると専門家へ依頼した方が自分で手続きを行って、費用を浮かせるよりも、メリットが大きいと思います。

    上記で記載した書類を手配するには、それ相応の時間を要します。
    相続登記は2024年4月1日より義務化されますので、早めに相続登記は済ませましょう。
    海外在住者がいる場合には、特に時間がかかりますので、司法書士などの専門家へ依頼することをおすすめします。

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